桜の花びら舞う頃に
しばらく立ち尽くしていた拓海は、ため息をつきながら、ゆっくりと腰を下ろす。


そして、傍らにあったリュックを手に取り、チャックを開けた。


ゴソゴソと中を探り、1つ1つ丁寧に中の物を外に並べていく。





青いスコップ


野球のボール


綺麗な貝殻




そして、筒状に丸められた一枚の画用紙。




拓海は、その画用紙を広げる。



「……パパ……さくら先生」



画用紙を見つめる拓海の瞳から、大粒の涙が流れ落ちた。






拓海が見つめるもの……






━━━それは、アパートでカレーを食べた時に、拓海とさくらが描いた似顔絵だった。





もともと2枚だったその絵は、寂しくないようにと、テープで1つに合わせてある。

そのため画用紙に描かれた3人は、しっかりと寄り添って見えた。

優しさと温かさに包まれた家族の姿が、そこにはある。




しばらくその絵を見つめていた拓海の顔に、やがて笑顔が浮かんだ。



「パパに……謝ろう……」



そう言って、拓海は立ち上がる。







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