桜の花びら舞う頃に
その瞬間!





一陣の風が吹き抜けた。





冷たい風は、拓海から家族の絵を奪い取ろうと動く。



消波ブロックにかかった画用紙が、風に押されてゆっくりと海の中に━━━



「行っちゃダメだー!」



叫ぶ拓海。



その瞬間、拓海の右手は画用紙をつかんでいた。

再び風に奪われないよう、しっかりと握りしめる。



「やった……」



拓海の顔に笑顔が浮かんだ。


「よ~し! 早く、パパたちのところに戻ろうっと!」


大きな達成感を胸に、拓海は消波ブロックを上りはじめる。








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