桜の花びら舞う頃に

「でも偶然ですね、知り合いに会えるなんて」


にこやかな笑顔を浮かべて麻紀が言う。

そのとなりで、さくらが大きくうなずく。


玲司は、ゴクリとツバを飲んだ。


「じゃ、じゃあ、知り合い同士ということで……せっかくだから一緒に飲まない?」

「えっ……」


玲司の提案にさくらと麻紀は顔を見合わせる。


「どうしようか?」


少しもったいぶった様子を見せる麻紀。



(由梨……いや、綾瀬先生と一緒に……?)



思わずほうけてしまう悠希。

それを横に並んだ玲司がヒジでつつく。

その顔は、明らかに自分の後に続けと言っている。

悠希は短く息を吸い込んだ。


「……よかったら、ご一緒にどうですか?」


精一杯、平静を装い、スッと右手を差し出す悠希。


「……お前、ダンス誘ってるんじゃないんだから」


しかし、あっさりと玲司のツッコミの対象となってしまう。


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