桜の花びら舞う頃に
泳ぐ悠希。

12月の海は、冷たいという感覚を通り越して、痛みすら覚える。





しかし……





その感覚も次第に薄れていく。


悠希は、自分が前に進んでいるのかすら、わからなくなりそうになった。





(くっ!! しっかりしろ!!)





心の中で自分自身を叱咤(しった)し、なんとか意識をつなぎ止める。



「俺がやらなければ……た~はどうなる!」



その想いこそが、今の悠希の支えになっていた。







そして━━━







いくつもの波を越え、悠希はようやく拓海の元にたどり着いた。


目の前には、波に揺られ浮かぶ拓海の姿がある。

胸が上下しているところを見ると、どうやら気を失っているだけのようだ。



しかし、まだ安心するわけにはいかない。



真冬の海は体温を急激に奪い、体力を奪い取る。

このままでは、命にかかわるだろう。


「た~、よく頑張ったね……さあ、帰ろう」


そう言って、悠希は拓海に向かって手を伸ばした。











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