桜の花びら舞う頃に
巨大な波に飲み込まれた悠希は、海中でグルグルと回転する。







苦しい━━━







しかし、それが逆に、薄れゆく意識をはっきりとさせることとなった。





(た~は!?)





悠希は目を開く。

拓海が、ゆっくりと沈んでいくのが見えた。






(拓海━━━っ!!)






悠希は、必死に手を伸ばす。








由梨のときは……


その手を


つかむことが出来なかった……






……でも!






た~のときまで


同じ過ちを


繰り返すわけにはいかない!







(た━━━っっっ!!)







懸命に伸ばしたその手は

沈みゆく拓海の手を

しっかりと握りしめた。







━━━俺は、この手を離さない!







そして、そのまま海面を目指し浮上する。



「ぷは━━━っ!」



海面から、顔を出した悠希。

しばらくぶりの空気が懐かしい。

悠希は、気が済むまで呼吸を繰り返した。

腕の中の拓海も、咳き込みながらも呼吸をしている。



「よし……さあ……行こう!」



悠希はうなずくと、岸を目指して泳ぎだした。










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