桜の花びら舞う頃に
悠希の脳裏に浮かぶ姿……
「さくらちゃん!」
砂浜のさくらは動かぬ悠希を抱きしめ、泣き叫んでいる。
その隣りには、毛布にくるまり校長に抱かれ眠る拓海の姿が見えた。
『そう、あなたを必要としている人……』
由梨は、ゆっくりと悠希に歩み寄る。
『あたしがいなくなって、あなたが受けた苦しみ……あなたがいなくなったら、今度はあの2人が背負うことになるのよ?』
そして、そっと悠希を抱きしめた。
『あなたは、生きなくちゃダメ!』
その身体から、確かに由梨の温もりが伝わってくる。
『生きて、あたしとの約束……た~を幸せにすることを……』
それは━━━
いつも感じていた、あの頃の温かさと……
『そして……さくらちゃんを幸せにしてあげて……』
何一つ変わることはなかった……
「由梨……」
悠希の瞳から、涙が溢れ出す。
由梨は、その涙を優しく拭い、そして微笑んだ。
『さあ……もう行って!』
そう言うと、由梨は悠希から離れる。
『あたしとは、いつかまた逢えるから……』
光の中で微笑む由梨。
『それまでは、今を精一杯生きて!』
抑えのきかなくなった瞳からは、涙がとめどなく溢れている。
『あたしの分まで生きて!!』
光が広がっていく。
『あたしは……悠希を好きになって……幸せでした……』