桜の花びら舞う頃に
目が覚めると、そこは病院のベッドの上だった。



「パパ!」


「悠希くん、目が覚めたのね!」



病室に、嬉しそうな声が響く。



隣りのベッドには拓海。

そして、2人の間にはさくらがいた。


「た~……大丈夫か?」


自分を心配するその言葉に、拓海は元気にうなずいた。


「悠希くんが、早く助けだしたおかげだって」


あと少し助け出すのが遅かったなら、危険な状態だったらしい。


さくらは自分の肩を抱き、身体を震わせた。


「そうだったんだ……」


悠希は身体を起こし、拓海を見た。



「……た~は、何で海に落ちたんだ?」


「うん……絵が海に落ちちゃって……それを拾おうとしたら、僕も落ちちゃって……」


「絵?」


「うん……3人でカレー食べた時に描いた……」



そこまで話し、拓海はハッとする。



「ね、ねえっ!! ……絵は!?」



拓海は裸足のまま床に飛び降りると、病室の隅にあった自分のリュックを探り始めた。


「パパが助けたとき……絵なんてなかったぞ?」


悠希は、そっと声をかける。


「どうしよう……落ちた時に、放しちゃったんだ……」


拓海の顔は、みるみる青ざめていく。



「ぼ、僕、探してくるっ!」



拓海はリュックを置くと、病室から飛び出そうとした。





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