桜の花びら舞う頃に
「た~……!」





悠希が口を開きかけた瞬間━━━





「━━━やめてっ!!」





それを遮って、さくらの声が響き渡った。

その声の大きさに拓海はもちろん、悠希も驚き、さくらを見る。


さくらは、拓海の前に立ちふさがった。



「馬鹿なこと、言わないで! もう……無茶しないでよ!」



その勢いに、思わず拓海は首をすくめる。

さくらはしゃがみ込むと、拓海の肩を強くつかんだ。



「絵は……また描けばいいでしょう?」



視線が、拓海と重なる。

その瞳には、涙が浮かんでいる。



「でもね……た~君のかわりはいないの!」


「先生……」


「た~君がいなくなったら……あたし……あたしは……」



そこまで言うと、さくらは急に立ち上がり、2人に背を向けて素早く目をこすった。



「あ……あたし……花瓶の水……かえてくるね……」



そう言うと、花が飾ってある花瓶を持ち、病室を飛び出していく。


後には、悠希と拓海の2人が残された。










< 525 / 550 >

この作品をシェア

pagetop