桜の花びら舞う頃に
「……た~?」



悠希は、肩を震わせている拓海を見つめた。



「怒られちゃった……」



拓海の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。



しかし、その顔には笑みが浮かんでいた。




「ホントの……ママに……怒られてる……みたいだった……」




拓海は、しゃくり上げる。


そんな拓海に、悠希は優しく微笑んだ。



「た~……おいで」


「パ……パ……」



拓海は振り返ると、泣きながら悠希の胸に飛び込んでいく。



「パパ……パパ……ごめんなさーい!!」



悠希の腕の中で、泣きじゃくる拓海。



「僕……ホントは嬉しかったんだ! 先生と一緒にいられるの、嬉しかったんだ!」


「た~……」



悠希は、優しく背中をなでる。



「でも……ママのこと忘れちゃいそうで……それがとても怖かったんだ……」


「た~……!」



拓海を抱きしめる悠希の瞳からも、大粒の涙がこぼれ落ちていた。










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