桜の花びら舞う頃に
しばらくの間、拓海は声を上げて泣いた。



そして、ひとしきり泣くと、その顔を上げた。



「パパ……」


「ん~?」


「あのね……夢の中にママが出てきたんだ……」



拓海は、目を細める。




「ママね~、笑ってた……」




嬉しそうに話すその瞳は……




「人は……誰も忘れることはないんだって。ただ……思い出という宝箱の中に、大切にしまわれるだけなんだって」




昨日までの拓海とは、違って見えた。




「僕ね~、ママにちゃんとサヨナラって言えたから!」




その瞳から、また涙がこぼれる。




「サヨナラ……またね! って……言えたから!」




笑顔で泣き続ける拓海。




「だからね……これからは……新しいママと3人で……ね」




悠希は、もう涙を抑えることが出来なかった。


2人は泣きながら、強く、強く抱き合った。








優しさに包まれていることを……





深い愛に包まれていることを……





強く、強く、その胸に感じて……











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