桜の花びら舞う頃に
そして……




「あ……」




さくらの指が止まる。



「悠希くん、この人……」



悠希は、うなずいた。



「これが……由梨だよ」







星野 由梨━━━




真っ直ぐ前を見つめるその瞳は



力強くて━━━



それでいて、優しさに包まれている。






(あたしは……この瞳を知っている……)






それは、光を失ったさくらの心に、新たな光を示してくれた人……



教師という道を選ぶ、きっかけをくれた人……



さくらの憧れの人で、ずっとずっと逢いたかった人……





(猫さん……)





さくらの心の中に、高2の春休みのことが蘇る。





(そうなんだ……由梨さんは……猫さんだったんだ……)





さくらは、胸の中が温かくなるのを感じていた。




「ふふふっ」




思わず、笑いが込み上げる。



「さくらちゃん……どうしたの?」



そんなさくらを、悠希が不思議そうにのぞき込んだ。



「ううん、何でもな~い!」



さくらは、イタズラな笑みを浮かべる。





(由梨さんとのことは……あたしの胸にしまっておこう……)





いつまでも、色あせないように……


大切な思い出の1つとして……





(ありがとう、猫さん……あなたの想いは、あたしも受け継いだから……)









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