桜の花びら舞う頃に
「失礼します」



さくらは、校長室の扉をノックし中に入る。

様々な賞状や、歴代の校長の写真が飾られた12畳程度の部屋。


校長は、その部屋の窓のところに立って、外を眺めていた。


さくらが扉を閉めると、校長はゆっくりと振り返った。

その表情は、あくまで険しい。



「ここに呼ばれた理由は……わかりますね?」


「……はい」



さくらは、辞表を握り締めた。



「単刀直入に聞きます」



校長は、席に着く。

さくらは、その机の前に立った。



「綾瀬先生……あなたは、拓海くんのお父様と、個人的なお付き合いをしていますね?」


「……はい」


「……わかりました」



校長は、ため息をつく。



「で、でも、あたしたちは純粋に好き合っていて、悪いことなんて何も……」


「でも━━━世間はそうは見てくれないことを、あなたは知っていますよね?」



校長の鋭い視線が突き刺さる。



「……はい」



さくらはうつむき、そう答えることしか出来なかった。



「そのことに対し、何か申し開きはありますか?」


「あたしは……」



さくらは、顔を上げる。



「あたしは、後悔はしていません!」



真っ正面から、校長の瞳を見つめた。



「教師としては間違っているかもしれないけど……人を好きになるという気持ちは、かけがえのない大切なものだと信じています!」



さくらの熱い想いに、校長は2、3度大きくうなずく。



「……あなたの気持ちは、良くわかりました」



校長は、姿勢を正した。



「それでは……あなたに伝えなくてはならないことがあります」










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