桜の花びら舞う頃に
そのとき、一陣の風が桜の花びらを巻き上げた。




「ふえぇ……」


「あら……愛花(あいか)が起きちゃったみたい」


「愛花~、愛花~、いないいないバァ~!」


「きゃっきゃっ」


「ふふふっ、た~君もすっかりお兄ちゃんね」


「へへへ~! あ、ママ、今度は僕に抱っこさせて~!」


「え~? 出来るかな~?」




微笑み合う3人に、悠希は目を細めた。








『━━━ずっと……お幸せにね……』








そのとき、風に揺れる桜の木々の間から、懐かしい声が聞こえた気がして━━━


悠希は、後ろを振り返った。




「どうしたの?」




不思議そうな表情を浮かべて、さくらは見つめる。



「いや……」



揺れる花びらを見つめたまま、悠希は静かにつぶやいた。






やがて






「━━━何でもない」




そう言って、悠希は微笑みかける。





「さあ、行こう!」





そして、手をつなぐと、満開の桜に背を向けて歩き出した。










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