桜の花びら舞う頃に

「━━━そう、俺と玲司は高校の時からの付き合いなんだ」

「そうなんですか……月島さん、苦労してますね」


悠希の言葉を、麻紀が軽い冗談で返す。


「ひどい! ひどいよ麻紀ちゃん」


玲司が大げさに泣きマネをする。

その様子に、3人はそろって笑い声を上げた。


「あはははは、ごめんなさい三上さん、つい」


麻紀が目尻の涙を拭いながら謝罪する。


「いや……麻紀ちゃん、謝ることはないよ」


悠希は笑いながら言った。


「実際、大変なことあったしね」

「えっ、何? 何?」

「聞いてみたいです!」


興味津々な様子の麻紀とさくら。


「うん……例えば、高3の夏休みの時なんか……」

「ちょっ、ちょっと待て! こら、お前━━━」


あわてて止めに入る玲司。

そのまま悠希の首に腕を回すと、耳元でささやいた。


「お前は、俺をサポートしたいのか……それとも、おとしいれたいのか……!」

「悪い悪い、冗談だ冗談!」


軽く笑う悠希。

その様子に、さくらと麻紀も笑う。

どうやら、興奮した玲司の声は2人の耳にも届いていたらしい。


「気にしないで、三上さん!」

「頑張って下さい!」


2人は笑いながらも応援する。


「うわぁ、最悪……」


その言葉にうなだれる玲司。


しかし、何かを思いついたのか、すぐに顔を上げる。


「……ねぇ、敬語……やめない?」


「えっ?」

「こういう席だしさ~! 敬語は仕事だけで十分だよ」


そう言って笑う玲司。


「俺たちのことも、玲司、悠希でいいからさ」

「う~ん……」


少し困惑ぎみのさくらと麻紀。

しかし、玲司は気にする様子もない。


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