桜の花びら舞う頃に
店内の喧騒とはうらはらに、悠希たちのテーブルは静まり返っている。


「わ……わかったよ、玲司!」


そのとき、悠希が沈黙を突き破って立ち上がった。


「悠希……?」

「さ……さくらちゃんって、呼べばいいんだろ!」


あっけに取られる3人。

しかし、玲司だけは、すぐに悠希の気持ちに気付くことができた。

玲司も続いて立ち上がる。


「そ、そうだよ悠希、それでいいんだよ!」


そして、さくらの顔を見る。


「……だから、さくらちゃんも……ね?」


ようやく、悠希と玲司の意図するところを理解したさくら。

思わず苦笑が漏れる。


「……わかったわ、今は敬語を使わない」


さくらは、2人に答えた。

悠希の機転により、凍りついていた空気は一気に溶け出した感がある。


「じゃあ……改めて乾杯といこうか!」


この雰囲気を壊さぬよう、玲司がひときわ明るい声を出す。


「賛成~! あ、店員さーん!」


麻紀もそれに続く。


ほどなくして、4人の元に新しいグラスが運ばれてきた。


本日2度目の乾杯。


1度目の乾杯のそれより、確実に4人の距離は縮まっていた。



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