桜の花びら舞う頃に
更にそこから30分後。

4人で飲み始めてから、1時間以上が経過している。

玲司を除く3人は、それぞれ飲む物が変わっていた。

悠希はサワー系、さくらは甘い系のカクテル、麻紀はさっぱり系のカクテル。

ただ1人、玲司だけはひたすらビールを飲み続けていた。


「麻紀ちゃん、あたし酔っぱらっちゃったよ~ぅ」


さくらが甘えた声で麻紀の腕に絡みつく。


「うわっ、さくら、やめてって!」


慌てる麻紀。


「私は、そんな趣味ないのっ!」

「え~、麻紀ちゃんのケチぃ!」

「……ケチとかの問題じゃなくて!」


目の前のさくらは、教壇に立っている時とはまるで別人のようだ。



(アルコールって……すごい……な)



悠希はしみじみ思った。


「……ったく、この子は酔うといつもこうなんだから」


腕に絡みつき離れないさくらを見ながら、麻紀はため息をつく。


「あはは、2人は仲いいね~」


その様子を悠希と玲司が笑う。


「うん、仲いいよ~! 昔からずっと一緒だから」

「そうなんだ? 同じ大学だったの?」


悠希がたずねる。

そんな悠希に『にへっ』というような笑顔を返すさくら。


「うん、大学だけじゃなく、地元の高校の時からずっと一緒なんだよ」

「……地元?」

「うん、あたしたち実家はこっちじゃないの。大学がこっちで、そのまま就職したって感じ」


そこまで言うと、さくらはくいっとノドを潤した。


「高校からの付き合いってことは、俺たちと一緒だね」


悠希は自分と玲司を交互に指差した。


「じゃあ、結構秘密なんかも知ってるんじゃない?」


玲司がイタズラな笑みを浮かべる。


「うん、知ってるよ!」


さくらは軽く答える。


「ちょ、ちょっと、さくら!」


麻紀は慌てて、絡みついているさくらを止めようとする。

しかし、さくらは気にした様子もない。


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