桜の花びら舞う頃に
「たらいまーっ!」
さくらのテンションは、麻紀に連れて行かれる前とさほど変わらないようにも思える。
「お帰り、お2人さん」
玲司は顔の前で手を組みながら言う。
「2人は、地元がこっちじゃないって言ってたけど……」
悠希は先ほどの話の続きを始めた。
「2人の出身はどこなの?」
「えっとね~、あたしたちは……」
そこまで言いかけ、ハッとした表情で麻紀を見る。
麻紀は、さくらのことをじっと見つめている。
「う……」
さくらは、慌てた様子で悠希たちに向き直った。
「ウチらの出身は、秘密じゃけぇ!」
しかし、思わず方言が出てしまうさくら。
「アンタ……それ、言ってるようなもんだって……」
そんなさくらに、麻紀は大きくため息をついた。
(しかも、何か変な方言だし……)
「あはは、さくらちゃんって面白いね~」
玲司が笑いながら言う。
悠希、そしてさくらも一緒に笑っていた。
「まったく……」
そう言いながらも、麻紀は苦笑まじりの笑顔を見せる。
「まぁまぁ、麻紀ちゃん、飲んで飲んで」
麻紀のグラスに、もうほとんど中身が入っていないことに気付いた玲司は、飲み物のメニューを麻紀に手渡した。