桜の花びら舞う頃に
しばしメニューに目を落とす麻紀。


「……ねえ、この高いカクテルって……?」


麻紀がメニューを指差す。


「2800円のやつでしょ? あたしも、それ気になってた」


さくらも一緒にメニューを覗き込む。


「ああ、フレイムね」

「うん、そう!」


2人は顔を上げる。


「それを頼むと、店員さんがショーを見せてくれるんだよ」


悠希がカウンターの店員を指差して言う。


「ショー?」


さくらと麻紀は声をそろえる。


「うん、シェーカーやボトルを空中に投げてカクテルを作るんだ」

「すごーい!」


2人は目を輝かせる。


「そのパフォーマンスのことを、フレア・バーテンディングっていうんだ。だから、そこから取って店の名前はフレアなんだよ」

「悠希くん、物知り~!」


さくらが手を叩いて誉める。

悠希は少し照れながらも、言葉を続ける。


「でも、ここはそれだけじゃないんだ」

「まだあるの?」


麻紀も興味津々だ。


「通常のフレア・バーテンディングに加え、店員が口から炎を吹くパフォーマンスもやるんだ」

「まさにフレアだろ?」


玲司はそう言って笑う。


「うん、面白そう!」

「見てみたーい!」


2人の目は、まるで欲しいオモチャを前にした子供のようだ。


「じゃあ、頼もうか?」

「え、いいの?」

「でも、高くない?」


悠希の言葉に、2人は少し戸惑う。


「いいでしょ、今日の日の記念にさ」


玲司も後押しする。


「……うん、じゃあ……」


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