桜の花びら舞う頃に
第12話『トラブルメイカー』
ヒョウ柄の、タイトなワンピースに身を包んだギャル風の女。

そのピンク色のリップから飛び出した言葉。


「玲司ーっ!!」


彼女は玲司の名前を呼ぶと、ドタバタと足音を立てて悠希たちのテーブルへとやってきた。


「れ~いじっ!」


彼女は満面の笑みを浮かべている。


「や、やあ、エリカ」


エリカと呼ばれた女性とはうらはらに、玲司の笑顔は引きつっていた。


「玲司、最近ぜ~んぜん連絡くれないんだもん!」

「いや……ちょっと、忙しくて……」

「昔は毎日メールくれたのにぃ!」


麻紀の肩がピクッと動く。


「い、いや、ほら、今日はみんなで飲んでるから」


しどろもどろになる玲司。


「みんな……?」


エリカは3人をジロリと見回す。


「こ……こんばんは」


思わず挨拶するさくら。

しかし、エリカは興味なさそうに一瞥(いちべつ)すると、また玲司にまとわりつく。


「玲司ってば、最近、お店の方にも全然顔出してくれないじゃない」

「お店!」


過剰な反応を見せる麻紀。


「ち、違うよ麻紀ちゃん! 別にいかがわしい店じゃなくて!」


一生懸命説明する玲司だったが、麻紀の視線はとても冷たい。


「え、エリカ、お前、連れの人が待ってるんじゃないのか!?」


なんとかこの場を切り抜けようと、エリカがいたテーブルを指差す。

そこには、少し頭がハゲた中年の男性がいた。

中年男は、寂しそうにこちらを見ている。


「あ~……じゃあ、ちょっと待ってて!」


すぐ戻るからねぇと言い残し、エリカはバタバタと席に戻っていった。


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