桜の花びら舞う頃に
「いや~、参ったね」
エリカがいなくなったのを見計らってから、玲司はとぼけた声を出す。
しかし、そんなことでは場は和まなかった。
「……ふ~ん、三上さんって、ああいう子が好みなんだ~」
さくらがポツリと言う。
「い、いや、好みとかじゃなくて……!」
「三上さんって……あんな子がいるのに……私を食事に誘ったのね」
麻紀もそれに続く。
「三上さんって……最低!」
さくらと麻紀、力を込めて同時にハモる。
「ぐはあっ! ……しかも、呼び方が、また他人行儀になってるし……」
泣き出しそうな玲司。
「ゆ、悠希~」
すがるように、悠希に助けを求めてきた。
「……知り合いは選べよ……三上さん」
しかし、玲司の期待を裏切って、悠希もさくらと麻紀の後に続いた。
「お、お前まで……!」
がっくり肩を落とす玲司。
「悠希くんの言う通りよ、三上さん」
「だから、三上さんはダメなのよ」
「しっかりしろよ、三上さん」
3人は容赦なく玲司を責め立てる。
「お、お前ら~!」
わなわなと震える玲司。
「……楽しそうに、何話してんの?」
不意にエリカが顔を出す。
「うわっ、エリカ!」
玲司の全身から冷や汗が一気に噴き出す。
「アタシも混ぜてよ」
と言うと、となりの席から椅子を持ってきて、玲司のとなりをキープする。
その様子に、明らかにウンザリした表情を浮かべる麻紀。
しかし、エリカはそんなことを気にする様子もない。
カウンターでは、先ほどエリカが頼んだフレイムというカクテルのショーが開催されている。
しかし、誰も今はそれを楽しむ気分には、なれなかった。
ただ1人、エリカを除いて……