桜の花びら舞う頃に
「あははっ、玲司ったら!」
テーブルに戻った2人を待っていたのは、エリカの耳につく笑い声、微妙な笑顔を浮かべた玲司、そして、隅に追いやられた悠希の姿だった。
悠希のいた場所は、ちゃっかりエリカが座っている。
思わず、トイレで作った笑顔が引きつってしまう2人だった。
「悠希くん、いいの?」
さくらがそっと耳打ちする。
さくらの柔らかい香りが、ふわりと悠希の鼻をくすぐる。
気のせいか、香りまで由梨に似ているような感がある。
心臓の鼓動が早くなるのを自覚しながらも、なるべく平静を装って苦笑を返す悠希。