桜の花びら舞う頃に
(もうっ!)




心の中で叱咤する麻紀。




(……よ~し)




麻紀は、バッグからボールペンを取り出した。



「はぁ……」



そんな麻紀に気付かず、玲司は一人ため息をついている。



「ねぇ……携帯、いつ買いに行くの?」



しばしの沈黙の後、麻紀は玲司に話しかけた。


「ん~、明日かな。やっぱり、ないと不便だし……」


寂しそうに笑う玲司。


「そっか……じゃあ……」


麻紀は、玲司を見つめた。



「……はいっ!」



2つに折り畳まれた、紙のコースターを手渡す麻紀。


「これは……?」


玲司は疑問に思いながら、2つ折りにされたコースターを開く。




「織田 麻紀、090-876……」




そこには、麻紀の名前と携帯電話の番号が書いてあった。


「これって……!」


勢い良く顔を上げる玲司に、麻紀は言う。


「あげる! ……そのかわり」


少し恥ずかしそうに言葉を続ける麻紀。




「私を……1番に登録してよね」




麻紀は、はにかんだ笑顔を見せた。



その笑顔は、玲司の心に深く深く刻み込まれていくのだった。









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