桜の花びら舞う頃に

「悠……希……」




不意に呼ばれた自分の名に、うなだれていた頭を跳ね上げる。



「由梨っ!」


「悠希……」



うっすらと目を開け、由梨はか細い声で悠希の名を呼んだ。

その間も、由梨の体温は低下していく。



悠希は、由梨が持っていたバッグの中からタオルを取り出すと、それを傷口に当てた。


「大丈夫……今すぐ救急車が来るから!」


悠希は、精一杯、由梨を励ました。


「……だから、もう大丈夫……もう……大丈夫だから……」


しかし、そう言いながらも悠希の両の目からは涙が溢れ出す。



もはや、上手くしゃべることは出来なかった。



由梨は、そんな悠希の涙をそっと拭った。



「ごめん……ね、悠希……」


「なんで……なんで由梨が謝るんだよ!」


「ううん……ごめんね……」



謝り続ける由梨。



その顔は、もはや涙でよく見えなかった。






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