桜の花びら舞う頃に
「さてと……」


久しぶりに腹の底から笑った悠希は、清々しい気持ちで立ち上がった。


「そろそろ戻ろうか。玲司たちも心配してるかもしれないし」


店内の様子を知らない悠希は、そう言ってさくらに手を差し伸べた。


「うん!」


さくらは、その手をつかみ立ち上がる。


「ねぇ……悠希くん」


立ち上がったさくらは、悠希の手を両手で握りしめた。




「もう……あんなこと言わないでね」




自分を真っ直ぐ見つめるさくらに、悠希は大きくうなずいた。



「もう、大丈夫……ありがとう、さくらちゃん」



その言葉を聞いたさくらは、ニッコリと微笑む。


「しかし……久しぶりに、人に抱きしめられたな~」


そう言って悠希は笑った。

その言葉に、さくらは少し恥ずかしそうな表情を浮かべる。


「いつもは、抱きしめる立場だからな~」

「ね……ねぇ、悠希くん」

「ん?」

「さ……さっき、抱きしめた時に……あたしの……その、胸が……」

「えっ!? あ……ああ……」


悠希は口ごもり、顔を赤らめた。


「やっぱり~!」


さくらは、両手で顔を覆う。

2、3回頭を振った後、指の隙間から悠希を見た。


「……あ、あたしの……胸……小さいって思ったでしょ……」


さくらは赤い顔で言う。


「……そ、そんなことないよ! 由梨と同じくらいだよ!」

「う~、……あたし、由梨さんの胸の大きさ、知らないもん」


少し、すねた様子を見せるさくら。




(うっ! な……何かフォローしなくては……!)




「で、でも……うん、いいニオイだったよ!」


しかし、ワケのわからぬことを言ってしまう。

会話がかみ合わない。


「あははっ、何それ~」


そんな悠希の様子に、思わず笑ってしまうさくら。

つられて悠希も笑う。




「行こう!」




2人は、店の入り口へと歩き出した。










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