桜の花びら舞う頃に
「アタシが呼んだら、すぐに来なさいよ!」




入り口に向かう悠希とさくらの耳に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。



「いつも遅いのよ、アンタは!」



スゴい見幕で怒鳴り散らす女の声。

さくらは、顔をしかめて悠希を見る。


「……ねぇ、この声って……」

「……うん」


悠希も、困った表情を浮かべる。

2人は、恐る恐る声のする方を見た。




果たして、2人の予想は当たっていた。




ヒョウ柄のワンピース、日焼けした肌、濃いめのメイク。



それは、間違いなく騒動のタネとなったエリカだった。



エリカは、自分よりも大きい男を、見上げるようににらんでいる。


男はというと、顔に髭をたくわえ外見は非常に怖そうにみえるが、エリカには頭が上がらないらしい。

筋骨隆々とまではいかないが、がっしりとした身体を小さく丸め、申し訳なさそうに謝り続けている。



「あたし、あの子、苦手~」

「俺もだ……」



2人は小声でそう言うと、もうこれ以上エリカと関わらないよう、少し急ぎ足で入り口へ歩き出した。




「あーっ!!」




しかし、エリカはそれを見逃してはくれなかった。

出来れば関わりたくはなかったが、見つかってしまったからには仕方がない。

悠希は短くため息をつくと、くるりと振り返った。



「……どうも」

「……」



さくらも振り返りはしたが、言葉は何も発さなかった。











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