桜の花びら舞う頃に
悠希はタイガーに向き直る。


「この野郎!!」


タイガーは右の拳を突き出してきた。

悠希は、それを後ろに跳び退いて避ける。

なおもタイガーは連続して両の拳を振り回すが、素早く動く悠希をとらえることは出来ない。


「こ……このっ!」


力を込めた一撃。

しかし、それはまたもや不発に終わる。

自分の拳に引っ張られる形でよろめいたタイガー。

思わず足がもつれ、そのままフレアの植え込みへと突っ込んでいった。


「何やってるのよ、バカタイガーっ!!」


エリカの罵声が更に飛ぶ。


「悠希くん……凄い……牛若丸みたい」


例えに五条大橋の牛若丸が出てくるところが、いかにも先生らしい。



牛若悠希はというと、あれだけ攻撃を避けたにもかかわらず、ほとんど息を切らしていない。



対する弁慶タイガー。

植え込みからなんとか抜け出した彼は、大量の汗をかき、息も絶え絶えになっている。


「もうやめろっ! お前の攻撃は俺には当たらない!」


悠希は、強く言い放った。


「う……うるせーっ!!」

「聞く耳なしかよ……」


はぁっとため息をつく悠希。


「絶対に、ギッタンギッタンにしてやる!」


怒れるタイガーは、再び悠希の顔面をめがけて拳を繰り出してきた。


「……まさに悪役だな、お前」


悠希は、先ほどと同じように後ろにステップし、それを避けようとした。




「!?」




その瞬間、タイガーの口元がニヤリと笑うのが見えた。

タイガーは握っていた拳を勢いよく広げる。

その手のひらから無数の砂利が飛び出し、悠希の顔を襲った。







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