−*初カレ*−
カーテンを開け、周りを見渡してみると、眞辺先生はいなかった。



窓の外を見ると、陽が暮れていて藍色の空が広がっていた。



時計を見ると、19時を回っていた。



もうこんな時間……。



長い間、宏ちゃんは私の手を握っててくれたんだ……。



私は眠っている宏介の手から自分の手を離すと、宏介の肩を揺らした。



『宏ちゃん…宏ちゃん……。』


「ん……ん?」


うっすらと目を開け、パチパチと目を開閉する宏介。



「姫華…起きたのか?」


『うん。』


「もう大丈夫なのか?」


『なんとか。』


むしろ寝過ぎて、今夜眠れるか不安。




でも怠さが抜けて、なんだかスッキリした。




優哉くんのことは……考えないようにしよう……。




思い出すだけで……心が冷たく冷えていく……。




「じゃあ、送ってってやるからそろそろ帰るぞ。」


『送ってってくれるの?』


「仕方ないから俺が車でな。」


『ありがとう。』


私は身体を起こし、ベッドから下りると、髪を手櫛で整え、制服のシワを伸ばした。



「車とってくるから校門で待ってろ。」


『分かった。眞辺先生は?』


「もう帰った。ドアも見回りが鍵閉めてくれんだろ。」


『ふ~ん。』




宏介が保健室を出ていったので、私も鞄を持って校門へ向かった。









校門に着くと、シルバーの車が私の方へ向かってきた。




運転席には宏ちゃんの姿が。





私の前に停まると、助手席のドアが開いた。
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