一番近くの君へ。
「バッグ、忘れてるぞ?」
一体、学校に何しに行くつもりか?
遅刻するより、手ぶらで学校に行く方がよっぽど酷いだろ。
「孝ちゃ〜ん!!」
泣きそうな顔をしてエレベーターのボタンを押すハナ。
…バナナ豆乳は忘れないくせにしっかりとバッグを忘れてくるとはな。
「孝ちゃん、待っててよ?」
たった今、自分だけ行こうとしてたくせに人には待っとけかよ。
「嫌だね。」
俺は歩きだした。
「孝ちゃんのイジワル!」
必死にそう叫ぶハナに俺は少し笑ってしまった。
…大丈夫だって、ちゃんと待ってるよ。
じゃなきゃ毎日ギリギリに家を出る意味がないだろ。
ハナがエレベーターに乗るのがわかると俺はそっと足を止めた。