夜嵐
だが、そのケースは黒川とは逆のケースが多い。
つまり、癌があるのに、発見されず、検査を通ったために、癌の成長が深刻となり、気づけば治療不可という場合がある。
それならば、その逆もなるのでは・・・
黒川はもう一度病院にいくことを決めた。

会社の玄関の前につくと、警備員が一人たっていた。
黒川は軽く会釈をして、社員書を鞄の中から取りだした。
警備員は1-2秒ほど、黒川の出した社員書を見つめた後、「どうぞ」と言い、入社を許可した。

「どもう」

また黒川は会釈した。
そして、エレベーターのボタンを押した。
しばらくすると、ベルが鳴り、ドアが開いた。
降りる人は誰もいない。
そのため、すぐに乗り込み、目的地の14階のボタンを押した。
言い訳なら山のように頭に浮かんだ。病院の待ち合い時間が多かったとか、診察に時間がかかったとか・・・
絶対に書類をなくし、手元に戻るまでホームでくつろいでいたなどとは言えない。
黒川はエレベーターの液晶が示す階数を見た。

五階だ。
考えるには時間が足りない。
書類をなくしたとこに動揺しているのも事実だ。
冷静似考えれば、遅れたことには代わりない。
それも、予定よりも一時間ほどだ。
会社には、先程連絡をいれた。遅れたことは問題ではない。
それに、今さら、汗だくでデスクに戻ったところで、結果は変わらない。
これは結果論だ。
我々、社会の歯車は結果を第一に考える。
つまり、努力などの情を示す過程論は評価されない。
ここでいう、結果論とは結果のみを評価することを言う。
過程論とは仮定と結果の両方から判断すると考える。
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