夜嵐
エレベーターの階数が9階を通過した。
黒川はもう少し冷静に考えれば、一度トイレに行き、なぜ遅れたのかを考えるべきだったと思った。
しかし、こういうとき、エレベーターは止まらないものだ。
これは、神が人間で遊んでいるのか、それとも本当に運命なのか。
よい方には、進めない。
黒川の目的地である14階まで止まらずに上がった。
エレベーター内部に設置された液晶画面に階数が13から14に変わる瞬間を見たとき、黒川は決意した。

「このことにはふれない」と・・・
つまり、誰に何を言われても、結果のみを言うしかない。
14階に着き、エレベーターのドアが開いた。
10センチほど、開いたとき、黒川はあることに気付いた。
結果とは・・・肺癌も言うべきか・・・
黒川自信は診察をもう一度受けることにしていた。
それを会社に連絡するべきか。それはやめた方がいいだろう。
別の病院で・・・プライベートで受けにいくしかない。

エレベーターが完全に開いた。
黒川は小さく息を吐き、姿勢を整えてながら息を吸った。
この間、約2秒だ。
だが、この短い時間内で気持ちを切り替えるには訓練が必要だ。
営業を長年続けてきた黒川にとって、この動作は日常でも活用する。
冷静さが必要だ。
全てをマイナスに考えるのではなく、全てをプラスに考える。
マイナスはマイナスでしかない。
それはプラスもプラスでしかない。

では、マイナスをプラスにするには「何」をすればよいのか。
それは「準備」だ。
黒川はここまで来るのに、多くの時間を使い考えた。
それは無駄なことなのだろうか。
いいや、無駄ではない。
そもそも、無駄などないのだ。
失敗をするからこそ、成長する。
そして、新たなビジネスチャンスをつかむことができる。
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