不協和音
闇唄
『偽善なんかいらない。同情なんかいらない。』
呟き、ソファーから立ち上がる。
電気のついていない薄暗い部屋に、少女の白いワンピースはよく映えた。
ヒタリ、ヒタリと足音を立てながら真っ直ぐ向かうのは、黒いピアノ。
グランドピアノではないが、電子ピアノでもない。
『みんなみんな、消えればいいのよ』
細く、白い指先で、鍵盤を押す。
――――――――――――――ポーン…
暗い部屋に、ピアノの音が響く。
少女は、長調のハーモニーを弾く。
スッと目を細めると、今度は短調のハーモニーを弾いた。
口端をつり上げる。
次は、――――――――――――――――――――――…不協和音を、織り成した。
『ふふっ』
心底楽しそうに、次から次へと不協和音を弾いてゆく。
『私に綺麗なハーモニーは合わないわ』
いつまでも、不協和音は鳴り響く―――。