あの夏の日の空に願う
驚きすぎて再び足を止め、その木を凝視してみる。
でも、いくら見ても何度見ても木の上。
建物でも何でもない、普通の木の上に、人影がある。
瑞々しい緑の葉に紛れ込むようにしてるけど、逆光で黒く浮き上がっていて隠れられていない。
シルエットで判断するに、男子学生だと思う。
その木の陰に行こうとしていた私は迷った挙句、危ないから声をかけてみようという結論に達した。
「あのぉ……もしもしー………」
声をかけても返事がないと思ったら、木の上の人物はどうやら眠っているらしい。
それなら尚更危ないだろうとこっちがハラハラする。
「あのー!!起きてくださいっ」
叫んでみるものの、起きる気配さえない。
何でこんなに爆睡?しかも木の上で。
そんなに眠いなら普通にベッドとかで寝ればいいのに。
というかこんなに叫んだの久々すぎて喉が…。
ゲホゲホと咽ながら息を吐き、もう一度叫ぼうと口を開いた。…瞬間、
「ん゛ー………」
ベストタイミングで、人影が唸り声を上げた。