あの夏の日の空に願う
…起きるかな、と思ってじっと木を見つめてみても、結局起き上がることもしない。
でもこれは、もうちょっと頑張ったら起きるかも……。
「起、き、て、く、だ、さ、いっ!!」
そう考えた私はここぞとばかりに大声で、一語一句はっきりと叫ぶ。
自分が寝ているときにやられたら確実に迷惑だろう。
でも今はそんなこと関係ない。
危ないんだから仕方ないよね。
自分で勝手に納得して、もう一度すぅっと息を吸い込み――…
「起きなさっ「あ゛ー…分ぁったって起きるからっ……」
………遮られてしまった。
思い切り吸い込んだのに、無意味に終わったじゃないか。
何か悔しいんだけど。
微妙なやり切れなさを胸に抱え、私はふーっと息を吐く。
不完全燃焼。
唇を尖らせてまた木の上の人物に視線を上げると、爆睡していた男の人はムクリと起き上がって、呑気に欠伸をしていた。
何度も言うが、木の上だ。
驚きを通り越して最早呆れている私に気付いているのかそうでないのか、男の人は私の方を見て、「………誰?」と呟いた。
そして、スタンと木から飛び降りる。
身軽な人。
猫みたいだな。
そんなことを思いながら、私は口を開く。