あの夏の日の空に願う
「たまたま通りかかったらあなたがここで寝てたから、危ないと思って声をかけたんだけど………」
頭一個分高いその人の顔を見上げるようにして、この状況を説明してみたものの、男の人は私をじぃっと見つめるだけで、何も言わない。
なっ…何だろう……。
グサグサと突き刺さる視線に私は左下へと視線を泳がせる。
薄い茶色の髪をさらさらと揺らす男の人は私を舐めるように見た後、「そうじゃなくて、」と頭を掻いた。
「……名前。何ていうの?」
その言葉に私は、へ、と小さく声を漏らした。
突然名前聞かれたら、普通驚くと思う。
もちろん私も驚いた。
別に名前を知られても困ることはないからいいんだけど。
そう思っているとは知らない男の人は何を勘違いしたのか、慌てたように喋り出す。
「俺は天空。小鳥遊天空。小鳥が遊ぶ天空って書いて、タカナシ ソラ」
どうやら、自分から名乗らないといけないと考え直したらしい。
随分と礼儀を弁えた人だ。
なのに木の上で寝ているとは、全くもって理解出来ない。