夢と恋と王子様






先輩は、いなかった。



誰もいない図書室の中で
私はほこりの被った本を
一冊手に取り

よく日の当たる
暖かい席で読みはじめた。





「あれ?恵梨…」


優しい胸の奥を
キュンとさせる声が

静かなこの場所に響く。



「先輩っ!!」



嬉しくて

思わず立ち上がった。


自然と笑顔になるんだ。


そうすると

先輩もつられて笑うから



嬉しくて
幸せで



もっと好きになる。




「もしかして今日も迷子?」


冗談まじりな口調で
笑顔で話してくる。


「さすがに違いますよ」


「気に入った?ここ」


「……はい、すごく。」


「そう、よかった」



私の机を挟んだ
正面の席に座ると

先輩は窓の外を見て
たそがれていた。



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