夢と恋と王子様
高鳴る胸の鼓動が
自分の耳によく聞こえる
「先輩は、優しいですね」
思わずそう口にしていた。
別に何もされた訳ではないのに
麻衣子から聞いた
“氷の王子様”
というあだ名が
あまりにも掛け離れた
王子様の笑顔を
私は知っているから。
「どうしたの?」
「あ……いや…」
「もしかして、俺の
あだ名の事知ってる?」
「…………はい」
「あれねぇ…酷いよね」
笑いながら
少し切ない顔をする先輩を
私はただ見つめていた。
「その通りなんだけどね。
実際話したりしないし
冷たい態度もとる。
だけど…俺の事を
ちゃんと知ってる人が
いればそれでいいから」
「…先輩は冷たい人じゃ
ないと思います」