夢と恋と王子様
あれからずっと
手を繋いで歩いていた。
しばらく歩くと
花火を見るために
集まった人達が
座っていた。
そこに私達も腰を下ろした。
手は自然と放れ
少し物寂しい気分になった。
「恵梨」
「はいっ」
「俺の事、名前で呼んで」
「…えっ?
なんでですか?」
「なんか………
名前で呼ばれたいから」
「えぇ~…無理ですよ。
先輩は先輩ですもん」
本当は照れ臭くて
頭の中で先輩の名前を
呼んでみただけで
顔が熱くなっていくのに。
「俺だけ“恵梨”って
名前呼んでんの
不平等だと思う。」
「それは先輩が勝手に…」
そう言おうとして先輩を見たら
今まで余裕の表情しか
見たことなかったのに
あの藤岡勇志先輩が
顔を真っ赤にして
すこし拗ねた表情をしていた。