夢と恋と王子様
麻衣子に頭を一発
叩かれてしまった。
「バッカじゃないの?」
「えぇ~」
「もっと自信もちなって」
そんな友達の言葉が
私にとってすごく心強かった。
数ヶ月ぶりに来る
秘密の図書室へ足を踏み入れた日
それはすでに
夏の暑苦しさはどこかへ行き
涼しい風が吹き付けるような
秋を目前とした日だった。
「先輩、こんなに授業サボって
単位平気なんですか?」
「あ、また名前で
呼んでないじゃん」
「質問の答えと違いますよ」
「恵梨」
「…………なんですか?」
笑顔を向けたつもりだろうか
私にはその笑顔が
全然笑ったように感じなかった。
「勇志…」
「うん、いい子」
私の頭をくしゃっと撫でて
先輩は読み終えた本を
片付けに立ち上がった。