夢と恋と王子様
私はどこかで
安心していたのかもしれない。
先輩は私の隣にいる
この秘密の場所を知っている
だから
幸せに浸っていたのかもしれない。
先輩がこの学校の
王子様的存在だということを
すっかり忘れていた。
だから先輩を好きな人が
私以外に沢山いるだなんて
わかりきったことさえ
頭の中から消えていた。
「恵梨香ちゃん?」
ある日の帰り道
後ろから声がして振り向くと
黒髪ロングの綺麗な先輩が
ニコニコしながら立っていた。
「はい……」
「やっぱり。
ちょっといい?」
あぁなんだか
面倒臭いな、なんて思った。
その人の笑顔が嘘だって
なんとなく気づいたから。