夢と恋と王子様
案外電車の席というのは
隣同士、近いもので。
真横に大好きな人がいることに
今さらながら緊張が増した。
本当に本当に今さらながら
これはデートなんだと。
「着いたよ」
「っ…!!お洒落!!」
「でしょ?」
おとぎの国の様な世界観のカフェに
興奮を隠せなかった。
席に着くと
突き刺すように寒かった外と比べ
程よく温かい店内と
すわり心地の良い椅子に
心が安らぐ気分だった。
「先輩、あたし幸せです」
「俺は恵梨がちゃんと
名前で呼んでくれたら
もっと幸せなんだけどな」
「え?……あ、あぁ…」
きっと先輩を名前で呼べば
誰よりも先輩を近くに感じれるのに
どこか恥ずかしい気持ちが
自分の心を支配していた。
なんという幸せな悩みだろうか。