夢と恋と王子様



案外電車の席というのは
隣同士、近いもので。

真横に大好きな人がいることに
今さらながら緊張が増した。


本当に本当に今さらながら
これはデートなんだと。



「着いたよ」


「っ…!!お洒落!!」


「でしょ?」




おとぎの国の様な世界観のカフェに
興奮を隠せなかった。



席に着くと
突き刺すように寒かった外と比べ
程よく温かい店内と
すわり心地の良い椅子に
心が安らぐ気分だった。



「先輩、あたし幸せです」


「俺は恵梨がちゃんと
 名前で呼んでくれたら
 もっと幸せなんだけどな」


「え?……あ、あぁ…」




きっと先輩を名前で呼べば
誰よりも先輩を近くに感じれるのに

どこか恥ずかしい気持ちが
自分の心を支配していた。


なんという幸せな悩みだろうか。


< 37 / 84 >

この作品をシェア

pagetop