龍とわたしと裏庭で【初期版】
4
目が覚めて最初に思った事は
『腹へった~』
「何か食べるかい?」
へっ? 誰?
圭吾さん?
寝ぼけまなこが一気に覚めた。
ここどこ?
ひょっとして今わたし本当に口に出して言った?
ガバッと起き上がってまわりを見回す。
わたしは明かりを落とした自分の部屋にいた。
勉強机の椅子に圭吾さんが座ってこっちを見てる。
開いたままの戸口から廊下の明かりが差し込んでいた。
「い……今何時ですか?」
「夜の八時くらいかな。何食べたい?」
「カップ麺」
「ちょっと待ってて」
しばらくして圭吾さんはポットとポリ袋を持って戻ってきた。
「シーフードとカレーどっちいい?」
「シーフード」
この家に来てから初めてカップ麺を見た気がする。
「彩名の夜食だよ。アトリエのキッチンにいつも置いてあるんだ」
待つこと3分、圭吾さんとカップ麺をすするというシュールな状況
――でも うまぁ~
「今朝は僕の何が気にいらなかったの?」
う……いきなり来たか
「気が立ってただけ。圭吾さんがそこにいたから八つ当たりしたんだと思う」
「医者は新しい環境でストレスがたまってたんだろうって言ってたよ」
「そうかも」
「でも、引き金を引いたのは僕だね?」
違うってすぐに言えなかった。
圭吾さんの目が陰った。
どうしよう
傷つけた。絶対傷つけた。