龍とわたしと裏庭で【初期版】
2
晩ご飯はいらないと圭吾さんが家に電話していてくれてよかった。
とってもじゃないけど入らない。
家に帰ると、和子さんが着物をたたんでくれた。
「洗って来年までしまっておきましょうね」
そうか来年もわたし、ここにいるんだな。
わたしが望めばこれから先もずっと。
今日はもうクタクタ
お風呂から出る頃にはフラフラ
髪を乾かすのもおっくうで、適当にふいて居間に行った。
広い和室に低めの家具を置いたその部屋には、いつも家族の誰かがいる。
今夜は珍しく圭吾さんがまだいて、彩名さんとコーヒーを飲んでいた。
「金魚どこ?」
わたしがそれだけ言うと、彩名さんは怪訝そうな顔をして、圭吾さんはコーヒーにむせた。
そんなに笑わないでよ
子供っぽい事くらい分かってる
わたしが置き忘れた金魚のぬいぐるみはすぐに見つかった。
でもその後、圭吾さんに「髪がまだ濡れてる」ってお小言を言われて、足元に座らされた。
乾いたタオルで髪をふいてもらっていると、
「圭吾がそんな事をするのを見る日が来るとは思わなかったわ」
って、彩名さんが笑った。
「いくらでも言えばいいさ――ああそれと彩名、志鶴を連れて浴衣を仕立てに行ってくれないか?」
浴衣?