龍とわたしと裏庭で【初期版】


晩ご飯はいらないと圭吾さんが家に電話していてくれてよかった。
とってもじゃないけど入らない。

家に帰ると、和子さんが着物をたたんでくれた。

「洗って来年までしまっておきましょうね」

そうか来年もわたし、ここにいるんだな。

わたしが望めばこれから先もずっと。


今日はもうクタクタ

お風呂から出る頃にはフラフラ

髪を乾かすのもおっくうで、適当にふいて居間に行った。

広い和室に低めの家具を置いたその部屋には、いつも家族の誰かがいる。
今夜は珍しく圭吾さんがまだいて、彩名さんとコーヒーを飲んでいた。

「金魚どこ?」

わたしがそれだけ言うと、彩名さんは怪訝そうな顔をして、圭吾さんはコーヒーにむせた。

そんなに笑わないでよ
子供っぽい事くらい分かってる

わたしが置き忘れた金魚のぬいぐるみはすぐに見つかった。
でもその後、圭吾さんに「髪がまだ濡れてる」ってお小言を言われて、足元に座らされた。

乾いたタオルで髪をふいてもらっていると、

「圭吾がそんな事をするのを見る日が来るとは思わなかったわ」

って、彩名さんが笑った。

「いくらでも言えばいいさ――ああそれと彩名、志鶴を連れて浴衣を仕立てに行ってくれないか?」

浴衣?
< 39 / 48 >

この作品をシェア

pagetop