赤い狼 ~棗の想い~
「大丈夫だから…、私は大丈夫だから…。ね?帰ろう。」
座り込んで俺の顔を覗き込んでくる稚春の顔は、酷く怯えていた。
…あぁ。やってしまった。
だから、目と耳塞いどけって言ったのに。
憔悴しきった稚春の顔を見て、頬にそっと触れる。
すると、大きく稚春の体が震えた。
それを見て、稚春の頬から手を静かに退ける。
「ごめん…。怖がらせたよな。」
今の俺は稚春に触れられない。
怖がらせるだけだ。
「…帰るか。」
小さく呟いてその場から立ち上がろうとして…
「うぉっ!?」
腕を力一杯引かれた。