赤い狼 ~棗の想い~
勿論、俺の腕を引いたのは
「どうかした?稚春。」
床に座り込んでいた稚春。
問い掛けてみるけど、返事が返ってこない。
それに、俯いてるから、どんな表情をしているのかも分からない。
「…がとう。」
「え?何て言った?」
「ありがとう…。」
そう弱々しく言う稚春の表情はまだ、俯いているから分からない。
「あ…りがと。」
二回目の"ありがとう"は、俯いていた顔を上げて、俺の目を真っ直ぐ見て言った。
その目には少し、涙が溜まっていて。
「…どうした?怖かったか?ごめんな。俺、怖かったよな。」
焦った。