青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
話題を切り替えてくれるハジメに俺は感謝した。
さっきの話をほじくり返されても俺が決まり悪くなるだけだしな。
フローリングにお盆を置くヨウは、自分で取れと憮然に告げてナニやら盆の上でごそごそ。
麦茶を頂こうとしていた俺は、ヨウの手元が気になってついつい覗き込む。
確認できる前に、「ほれ」俺の手の平にハンカチを落としてきた。
次いで、グラスに入っていた氷を二つそこに落とされる。
三点リーダーをいつまでも出す俺は、「なにこれ」相手の意図が全然読めなくて首を傾げるしかない。
「素手だと濡れるだろうが」って言われるけど、いや、だからなんで俺が氷を持つ羽目に。
目を点にしていると、「こうしとけ」ハンカチに落とされた氷をしっかり持って左の耳をサンド。
冷たさに身を震わせる間もなく、「俺のお下がりになるけど別にいいだろ?」好きなの選べってお盆の上にバラバラと装身具を散らばせていく。
ハジメやワタルさんが良いの持ってるじゃんか、とか言ってそれを手に持っていたけど、へーい、俺は状況が呑めないんだぜ兄貴。
なんでお前、俺に装身具改めピアスをくれようとしてるの?
俺、耳にお穴なんてあいていないんだけど。
……、まさか、お前が考えてるワルデビューって。
「最初は左な左。こういうのって俺はどうかと思うんだが…、男の場合、ピアスは左耳にしておかないと変な意味に取られることもある。
っつーのも、あんま日本じゃ知られていないんだが外国じゃピアスをするに当たって、左耳だけはノーマル。右耳だけはゲイ。両耳はバイセクシャルって意味があるらしい。
勘違いされるらしいから、男は左耳にピアスが妥当なんだと。
俺はあんまこういうの信じねぇし、右につけようが左につけようが個人の自由だって思うんだが…、ま、取り敢えず左にしとこうな」
いやいやいや、そんなのほほんと説明されても…、根本的なところが問題なんだけど。
青褪めて、俺はぎこちなく舎兄に視線を流す。
そこにはピアッサーを持った悪魔一匹。
ニッと満面の笑みを浮かべるヨウは、「すぐ終わるって」チクっとするだけだ、と俺の肩に手を置く。