青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
プツッて今、耳元で聞こえたけど、それってあれだろ。
耳朶が貫通したってことだろ。
ナニが貫通したのかも想像したくない、できない、思考停止でなあんも考えたくないっ。
とか思ってる場合でもなく!
「ちょぉおお兄貴ィイイイ!」
ようやく息を吹き返した俺は嘘だろ、あけちまったのかよっと大絶叫。
「おうよ」憎たらしいほど誇らしげに笑う舎兄は、もうピアスが刺さってるからとほざきやがりましたよ。
この時点ではまだ信じられなかったんだけど、ヨウに持って来てもらった手鏡でお耳とご対面。悲鳴を上げる他なかった。
ウゲぇえええッ!
ま、マジでピアスがっ…、シルバーのボールピアスが刺さってやんの!
ぶっすり俺の左耳朶に貫通してる!
目の錯覚とか…、ないよなっ、刺さっちまってるもん!
そういう感触もあるもん!
「ガチで、ワルい子ちゃんになっちまったっ! どぉおおすんだよぉおおこれぇええ!」
ががーんっとショックを受ける俺に傍観者はすっかり大笑い。
涙を目尻に溜めて、煙草吸ってる時点でワルい子ちゃんだろ、とか、外見ワルデビューの一歩を踏み出せて良かったじゃないか、とか、膝を叩いて盛大にゲラゲラクスクスヒィヒィ。
おいおいおい、そこっ!
俺は真面目にショックを受けているんだぞ。
地味少年をそんなにも笑ってもいいのかっ、ショックを受けているお友達は慰めるってのが道理だろーよ! 不良ったら人情がないんだな!
いっちゃん人情がないのはっ、ヨウお前だ!
なんってことをしてくれたんだよっ!
俺、嫌だっつったのにぃいいい!
鏡を持ったままブルブルに体を震わせて相手を睨むんだけど、向こうは平然と笑みを浮かべている。
寧ろなんだか喜んでいる様子。