青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
……話は戻すけど、偶然の偶然にもヨウを助けちまった俺は、後日体育館裏に呼び出されて、あいつからお礼を言われた。
不良のクセに、ヨウは義理と人情を大切にする奴だった。
俺はてっきりリンチにされると思ったけど、ヨウはお礼とガムをくれた。ついでに簡単な会話を広げて、気づいたら馬が合ってしまった。
それだけでも奇跡なのに、なんだかんだあって舎兄弟を結んでしまった。
最初は白紙にしようと思っていた舎弟だけど、気づいたら二年目に突入しているのだから本当に笑えてくる。舎弟になったせいで沢山喧嘩に巻き込まれた。傷付くこともいっぱいあった。おんなじくらい気の良い不良と沢山出逢えた。
だから、まあ今はヨウの舎弟で良かったと思っている。
本当に色んなことがあったけど、舎兄のヨウとは一番の仲良しだ。今さら舎兄弟を白紙にしようとは思わない……喧嘩の度合いによっては白紙にしようかな、と思ったりなかったり、だども。
さてと、説明も此処までにして。
「も、も、もうタコ沢は来てねえよな?」
体力の限界を感じた俺は適当な教室へ駆け込む。
そこは二年生の教室、ただし他クラス!
俺が大慌てで教室に入ったせいで、教室にいた連中の視線が一斉に飛んできた。
ぐぐぐっ、なんて冷たい目! だけど俺はそんな視線よりも! 自分の命の方が大事! 自分イチバン!
「はぁ……はぁ……ドア閉めなきゃ」
少しだけ息を整えた後、俺は追い駆けてくるタコ沢が来る前にドアをスライドさせた。
ドアを閉めればこっちのものだ。あとは身を屈めて、タコ沢が通りすぎるのを待てば俺の勝ち「ケイ。見つけたんだぜゴラァア」ゲゲゲのゲ!
閉じたドアをこじ開け、ひとの襟首を掴んでくるタコ沢は俺をさっさと廊下へ引きずり出した。
嘘だろお前! まだ追って来るの?! チャイム鳴るんですけど!
「ばかばか! タコ沢のおばか! 俺は勝負なんてしねーって言ってるだろ!」
必死こいてドア枠にしがみつく。
相手が馬鹿力で引き剥がそうとしてくるけど、俺も死に物狂いだ! この手は絶対に離さないぃいい!
「くらぁケイ! 往生際が悪いんだぜゴラァア! なんで勝負しねぇんだ!」
地団太を踏むタコ沢だけど、なんでって理由なんて一つしかないだろ!
「俺は喧嘩なんてできないっつーのっ! お前だってよく知ってるだろ! なのに暴力を振ろうとするなんて見損なったぞバーカ! タコ沢のバーカ!」
「だあああっ、誰が馬鹿だ!」
「タコ沢くん、貴方のことです!」
「くそったれめ! 俺に対する暴言は許されるってか?!」
「謝ったら見逃してくれるか! だったら全力で土下座して謝りますけど?!」
「却下だ。俺は勝負がしたい!」