青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
血の気の多い男め。
だったら絶対に勝負なんてしてやらねーよ!
大体、俺は負けが見えている喧嘩なんて大嫌いだ! いや、そもそも喧嘩が大嫌いだ! 俺に勝負を吹っ掛けること自体が間違ってらぁ! ……ええいこうなったら。
俺は相手の弁慶の泣き所を思いきり蹴り飛ばした。
「ヅッ! いってぇ!」
悲鳴を上げるタコ沢の手が緩んだ瞬間、俺はその場でしゃがみ、勢いづけて相手の膝を足で叩く。
タコ沢が尻もちをついた隙に、肩からずり落ちている通学鞄を定位置まで戻してBダッシュ。全速力で自分の教室まで逃げた。
よしよし、完璧な不意打ちだ。
これでタコ沢と別クラスだったら万々歳だったんだけど、あいつと俺は同じクラスメートという……神様、俺が何かしたか?! 酷いってもんじゃないんですけど! よりにもよってなんでタコ沢と同じクラスなんだよ泣きてぇ!
(チャイムが鳴り始めた! どうにか追いかけっこは終わりそうっ、ゲッ!)
もう追って来てるじゃん!
さすが荒川チーム一イチのど根性不良。どこまでも追って来るんですけど!
「ケイィイイ! 不意打ちとは卑怯だぞ貴様ぁあああ!」
「もぉおおおお前嫌いぃいい! 暑苦しいったらありゃしねえよ!」
チャイムが鳴り終わる。
滑り込みで自分の教室に入る、その瞬間、肩を掴まれた。
今度こそ万事休す! もう逃げられねぇ! そう思って振り返った直後、タコ沢の体が向こうへ吹っ飛んだ。文字通り、向こうへぽーんと吹っ飛んでしまった。正しくは蹴り飛ばされた。
情けない声をあげてすっ転ぶタコ沢を余所に、蹴り飛ばした犯人は大あくびをこぼす。
「邪魔。ドアの前に突っ立ってるんじゃねえよ。遅刻するだろうが」
犯人のことヨウは、タコ沢に向かって不機嫌に舌打ちをした。
おおう、蹴り飛ばされたタコ沢くん、可哀想に。
でも助かった……俺はすごく助かった。ヨウありがとう! もう少しで勝負を仕掛けられるところだったぜ!