青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「だからこそさ。俺、分かる気がする」


ヨウはポンっと弟分の頭に手を置いて、ちょっとだけ榊原の気持ちが分かる気がするんだと吐露した。


ほんの少しだけ、舎弟の楠本を置いて消えた気持ちが、なんとなく分かる、と。


まさか此処で榊原の話題を切り出されるなんて思ってもいなかった。

驚き呆ける俺等を余所に、「もし俺が榊原なら」きっと同じことをしてると思う。ヨウは平坦な声音で語り部に立つ。
 

「榊原は楠本の舎兄だったが、同時に短期間チームのリーダーをしていた。リーダーっつのーは、やっぱチームの責を取る必要があると俺は思っている。
あくまでこれは憶測だが榊原は自分中心に起こした問題、そして敗北の責を取って姿を消えちまったんじゃねえかな。例えそれが卑怯者の臆病者だって言われても」


奴にはそうするしか責を取る手立てがなかったんだと思う。

消えることで仲間を浅倉の下に返そうとしたのかもな。

元々榊原が立ち上げた新チームは浅倉の下にいた仲間が大半。
力で相手を捻じ伏せ、手腕のある不良だけを引っこ抜き、お仲間ごっこの念を抱く甘っちょろい浅倉をどん底に陥れようとした。


だけど無常にも奴は敗北を味わい、尚且つチームで内発が起きた。


チームの在り方に独自の美学と強い信念を持っていたが故に、内発は奴にとってスンゲェ堪えたと思う。
 
榊原をよく知ってるわけじゃねえけど、あいつの話を聞く限り、性格上…、死んだって自分が間違ってた、ああごめんなさい、なんざ思ってないと思う。

簡単に変えるような信念は抱いてないだろうよ。


けど敗北の責くらいは取ろうと思ったんじゃねえかな。

そのリーダーとして、一端の舎兄としてな。
 

< 175 / 804 >

この作品をシェア

pagetop