青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「ケイ、いつも悪いな。今夜邪魔するよ」
「いいって、母さんには連絡しておくから大丈夫。お前ン家の事情は両親も知ってるし、俺の家は泊まりに甘い家だ。気にするなよ。家事は手伝わされると思うけど」
「邪魔するんだ。それくらいするって。ついでにおじちゃんおばちゃんになんか手土産買ってから行く」
「あ、牛乳が切れてるって言ってたなぁ」
「牛乳? 二本で足りるか? ケイの家、めっちゃ牛乳飲むし」
「三本かなぁ」
「おっし、手土産は牛乳三本な」
ヨウは学校で一番恐れられている不良だ。
だから周りから怖がられているし、問題児だと陰口を叩かれていることも多いし、密かに退学を望む教師も少なくない。
気持ちは分からないでもないよ。
そういう輩が近くにいるだけでもテンション下がるよな。
だけどヨウと関わりを持った俺からしてみれば、荒川は「普通」なんだよな。
俺と同年代の男で、面白いことが大好きで、両親とうまくいっていない高校生くん。
付録としてイケメンと手腕の強さがついているだけで、いや……その付録がものすごく羨ましいんですけど……わりかし不器用に毎日を過ごしている。
その一面を知っているからこそ、俺はヨウと対等に接している。
これも舎兄弟関係があったからこそ、だ。
「そういや、今日って何するんだ。午前中しか授業がないって言ってけど、HRしかないなら出なくて良くね?」
「おいおいヨウさん。今日のHRは係り決めと班決めだぜ? ふけちまったら適当な班に回されちまうぞ?」
「班決めぇ? まじか。俺このままでいいんだけど」
だるい奴と班になりたくない、ヨウは机の上で頬杖をついて唸る。
さっそくサボりたい、とぼやき始めたもんだから、俺はため息をついてしまった。
お前なぁ。去年、俺達は欠課が多すぎて苦労したじゃないか。もう忘れちまったのかよ。今日はHRだけなんだから出ようって。